農作物に含まれる放射線量に関する考察(市場流通野菜(葉菜)は過剰に放射性カリを集積している)

農作物に含まれる放射線に関して、セシウムだけではなくカリウムの放射線も考慮した上で今後の農作物のあるべき姿を提言していきたいと考えております。

放射性Cs濃度とK40濃度からみた作物のK栄養水準の現状と最適K濃度の推定

ーきのこの放射性セシウム濃度が高い原因についての一考察ー

 

1.はじめに

Kは作物の必須元素でありO、C、H、Nや水稲のSi等を除けば、一般に重量では最も多く吸収される多量元素である。作物の放射性Cs吸収削減にK施肥が有効であるが、一方K資源は今後100年で枯渇するとも言われている。作物はKを無駄に過剰に吸収するので、これまで推定されてきた作物の最適K濃度は幅が広く曖昧である。今後は最適K濃度を幅狭く推定し、放射性Cs吸収の機構を踏まえK施肥法の効率化が必要である。

作物のうち水稲の場合は、根圏のKがゼロに近くまで不足状態となったと察知すると、新たに多量元素のNa吸収チャンネルを開き代替吸収を開始し、量的にもK不足を化学当量的に多量にNaで代替吸収する。新たにチャンネルを開くので代替Naの吸収は非連続的に高まり、水稲茎葉のKとNa濃度にはほぼピンポイントの明瞭な変換点となり、Naの代替吸収開始点から水稲の最適K濃度を幅狭く精度よく推定できる。推定した最適K濃度から計算すると、水稲は形が急に大きくなる時期にKを最も多く吸収し、K栄養が十分であれば形が決定された出穂後はKを吸収しないと推定した。微量元素の安定Csは、根圏にKがあっても積極吸収されるが、根圏のKがゼロとなると新たに代替元素のNaチャンネルが開きCsが1桁多く積極的に吸収されると考えられた。(2013環境放射能除染学会要旨、1985宮農セ報告)。最近の放射性セシウムを用いた報告(2015 SSPN)でも、水稲の出穂後の放射性Csの吸収は僅かであるとされている。

このように根圏Kがゼロになると開始される多量元素の代替吸収から、作物の最適K濃度を幅狭く推定することは作物の生産コスト削減に加え、放射性Cs対策を効率的に進める上で有用である。しかし代替吸収される多量元素の種類については作物別に優先順位がある。例えば水稲や多くの野菜ではNaをまず優先して代替吸収するが、トウモロコシではMgをまず代替吸収する(2014土壌肥料学会要旨)。一方微量元素であるCsについては水稲の場合を敷衍すると、作物の種類によらず多量元素の代替吸収が開始されると放射性Cs吸収が非連続的に1桁増大すると予想される。そこでこれまで蓄積された、作物の放射性Csと放射性K40の膨大なデーターから、作物種別に、最適なK濃度の推定を試みた。また作物のK栄養水準については、原発事故以来放射性Cs濃度の低下がほぼ順調な野菜と、低下が緩慢なしいたけについて検討した。

 

2.放射性Csと放射性K40濃度のデーターから、野菜のK栄養水準の現状と最適K濃度を検討した。

既存のデーターのうち、K施肥水準を変えて作物のK、Na濃度が報告されている数種の野菜については、KとNaの濃度の関係の変換点から最適K濃度を推定し、市場流通のものは最適K濃度の2~3倍過剰吸収している場合もあることを報告した(2014環境放射能除染学会要旨)。ここではこれまでの数多くの種類の野菜の放射性Csと放射性K40のデーターのなかから種類の野菜を抽出し、1%K濃度=30.4Bq/kgで換算しながら、野菜の種類毎に、K栄養水準の現状と最適K濃度について検討した。

 

3.原木しいたけはK不足になると代替吸収チャンネルを開きCsを1桁多く吸収すると考え、ほだ木樹皮のK栄養水準の経年変化の検討を試みた。

既存のきのこのK、Na、Ca、Mgのデーター(五訂食品成分表)から、きのこ類は野菜に比べK不足状態にあると考えられた。きのこは短時間に急に大きくなるので一時的なK要求量が高いと考えられる。しいたけはほだ木の限られたK栄養源下で生育するためK不足になりやすく、またほだ木樹皮の放射性Csに比べKは降雨で溶脱しやすく、そのためその伸長期に一時的にKが不足し代替吸収チャンネルが開き放射性Cs濃度を1桁高めるという仮説を考えた。そこでしいたけほだ木樹皮の放射性CsとK40の経年変化調査を試みた。